東京銀杏会第24回トップフォーラム (2019年3月16日)のご案内 https://tokyo-uni-dousoukai-rengoukai.org/alumniinfo/info_tokyo/780/

東京銀杏会第24回トップフォーラム (2019年3月16日)のご案内

2019年3月5日 更新

テーマ:豊かで健康な長寿社会の建設

日本は歴史上例のない超長寿社会の入口にあり、人生100年が普通になることも予想されている。

しかしただ単に寿命が延びただけで、病魔に苛まれ貧困に喘ぐことになっては、「私たちは何をやっていたのだ」ということになってしまうであろう。
そこで今年度のトップフォーラムは、「豊かで健康な長寿社会の建設」をテーマとして取り組みたいと思う。

2019年の東京銀杏会第24回トップフォーラムは、3月16日(土)13時30分から東大本郷キャンパス理学部小柴ホールで開催いたします。

開催日時

2019年3月16日(土)13時30分~18時

開催場所

東京大学構内理学部1号館2階「小柴ホール」

コーディネーター/パネリストの紹介と講演要旨

コーディネーター

飯嶋 勝矢 氏

医師、医学博士、東京大学・高齢社会総合研究機構教授

ご講演タイトル

なぜ老いる? ならば上手に老いるには― 国家戦略としての「フレイル予防」―
(フレイルとは、体が弱くなっている状態のこと。早く介入すれば元に戻る可能性がある。)

ご講演要旨

健康長寿を実現するために、改めて何に気をつけるべきか。「健康⇒虚弱⇒要介護⇒衰弱⇒天寿」という一連の流れのなかで、国民に少しでも前向きな気持ちで予防意識を高めてもらうことも狙い、虚弱のフェーズを『フレイル(Frailty)』という新たな概念で位置付けた。

このフレイル概念には身体的衰えの側面だけではなく、心理的/認知的フレイルおよび社会的フレイルなどの多面性も含まれ、これらの負の連鎖として自立度を落としていく。

フレイル予防、すなわち健康長寿の実現のため、国民一人一人に、「栄養(食と歯科口腔)・運動・社会性」の3つの柱を三位一体として、どのように意識変容・行動変容させるのか。そして地域自体のフレイル化をどう抑制するのか。

多面的なフレイルへの一連の包括的アプローチ施策として、フレイル予防は『総合知によるまちづくり』という認識の下、自治体行政、各専門職能、市民自身が二人三脚を組む必要がある。

ご講演者プロフィール
1990年 東京慈恵会医科大学 卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座助手、同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016年より現職の東京大学高齢社会総合研究機構教授。内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員にも就任。厚労省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」構成員、厚労省「全国在宅医療会議」構成員、「認知症対策官民連携実証プラットフォームプロジェクト」有識者メンバー。

パネリスト

山口 晴保 氏

認知症介護研究・研修東京センター センター長

ご講演タイトル

認知症を正しく理解して予防(先送り)し、適切に対応すれば「笑顔の老後」

ご講演要旨

アルツハイマー型認知症は認知症発症の20年以上前から脳病変が始まっている。予防は発症を先送りにすることで、健康的なライフスタイルで先送りできるが、長生きしていればいずれなる可能性が高い(現在95歳以上の8割が認知症)。

運動がとくに有効だが、何のために認知症を先送りするのか?答は「死ぬまで働くため」。若年性(65歳未満)は早期発見が大切だが、90歳超高齢者で早期発見する必要があるだろうか?現在の治療薬は進行を少し遅らせるだけの効果しかなく、超高齢者では副作用も出やすい。認知症になっても介護者が適切に対応すれば、本人は笑顔で過ごせる。

今後、根本的治療薬ができて発症の10年前から治療すれば、アルツハイマー型認知症を発症しない。ところが、アルツハイマー型認知症は高齢者の死因の一つなので、治療できるようになると、平均寿命はさらに延び、高齢者人口がさらに増え、「高齢者 健康長寿で 皆貧乏」の時代が来るだろう。

ご講演者プロフィール
1976年群馬大医学部卒業。同大学院で神経病理学を学び、1980年に卒業(医学博士)。同年神経内科に入局し、アルツハイマー病の研究を開始して以降、病態解明を目指して脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたって研究を続けた。1986年に群馬大医療短大助教授、1993年に同教授。1996年に改組で群馬大学医学部保健学科教授。2011年4月より組織替えで群馬大学大学院保健学研究科教授。近年は、認知症の診療術、認知症のリハビリテーション、介護予防、群馬県内の地域リハビリテーション連携システム作りなどに注力した。2016年10月から現職。

前田 展弘 氏

(株)ニッセイ基礎研究所 生活研究部 ジェロントロジー推進室 主任研究員
東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員

ご講演タイトル

人生100年時代の高齢者の暮らしとお金

ご講演要旨

人生100年時代、最期まで安心して暮らしていくためには「お金」が必要です。そのお金にも“寿命”があります。漠然と何とかなるだろうと考えていてはいけません。しっかりと先を見据えた対策が必要です。

私からはまず前提認識として、

  1. 高齢者のお金の実情(必要な老後生活費?家計や消費行動の実態?医療・介護・葬儀にかかる費用等)
  2. 年金制度の行方
  3. 昨今の金融サービスや近年注目を集めるファイナンシャル・ジェロントロジー
  4. の取組動向についてお話させていただきます。その上で、

  5. 最期まで安心して暮らし続けるためにはどうすればよいか、人生100年を“より良く”生きていくにはどうすればよいか

とテーマを拡げながらその「対策」を考えます。 

その中では、最大の生活保障となりうる“生涯現役社会”の実現、高齢者等の暮らしを支える“地域包括ケアシステム”の実現に向けた、最新動向もご紹介したいと思います。

ご講演者プロフィール
1994年早稲田大学商学部卒業。2007年日本大学大学院グローバルビジネス研究科修了(MBA)。2004年よりニッセイ基礎研究所。2006~08年東京大学総括プロジェクト機構ジェロントロジー寄付研究部門協力研究員、2009年より東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員。専門はジェロントロジー(高齢社会総合研究学)。東京大学のメンバーとして高齢化課題解決に向けた様々な研究及び事業(セカンドライフ支援事業、リビングラボ事業、高齢社会検定事業等)を手がけてきている。

飯田 泰之 氏

明治大学政治経済学部 准教授

ご講演タイトル

世代で閉じる社会保障制度改革

ご講演要旨

現在の日本の財政状況を考える際に、債務だけを見て判断してはいけない。政府資産とあわせたバランスシートの視点に立つと、日本における財政問題は現時点の債務残高そのものにはないことがわかる。
日本の財政における課題は、今後の増大が見込まれる社会保障費について長期的な均衡をはかることにつきる。現在の社会保障制度は世代間移転を前提に設計されているため、年齢構成から強く影響をうける。維持可能な社会保障制度への転換にあたっては、世代内移転を前提としたシステムの構築が求められる。

その際には、寿命・傷病・介護それぞれについて、日本人の平均値付近に損益分岐点をおいた制度—つまりは保険数理面で妥当性のある仕組みを、急ぎ準備しなければならない。社会保障を巡る制度移行には時間がかかる。我が国における最後のボリュームある世代である団塊ジュニアが新制度に移行できるよう改革を進めるためには、残された時間はそう長くない。

ご講演者プロフィール
1998年東京大学経済学部卒業。2000年3月東京大学経済学研究科修士課程修了、2003年同大学経済学研究科博士課程単位取得退学。駒澤大学経済学部専任講師・准教授を経て、2013年より現職。専門は日本経済・ビジネスエコノミクス・経済政策・マクロ経済学。内閣府経済社会総合研究所客員研究員(2003年5月~2005年3月、2007年4月~2009年3月)、参議院事務局特別調査室客員調査員(2004年4月~2005年3月)、財務省財務総合政策研究所客員研究員、上席客員研究員(2009年9月~2017年6月)、総務省自治体戦略2040構想研究会委員(2017年10月~2018年7月)、内閣府規制改革推進会議委員(2016年9月~現在)などを務める。

伊藤 明子 氏

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 地方創生総括官補

ご講演タイトル

超高齢時代の住まいとまちづくり

ご講演要旨

人生100年時代においては、住まいは戸建ての持ち家をアガリとする、住宅双六は通用しません。すでに高齢期の住まいをどうするか、賃貸を含めて当初から様々な選択があるなど、従来の常識は変わってきています。今後の住まいのポイントは何か。

まず、サービス付高齢者住宅にみられるように、住宅政策は「住宅建設」から「住生活」に舵をきっており、サービスも含めてくらしの場としての視点を重視する方向にあります。  
次に、空き家問題を含め、既存の(中古)住宅の流通は、高齢者が住宅という形で形成してきた資産をフロー化させ、老後を安心して過ごさせるためには喫緊の課題です。さらに、地域包括ケアへの対応を含めて、住宅の立地問題、いわば「地域・まち」に住むという感覚はより一層重要となります。このような問題に対し、現在どのような答えが用意できているのか、住み替える場合、住み続ける場合も含めて、共に考える機会となると幸いです。

ご講演者プロフィール
1962年生まれ。1984年京都大学工学部建築学科卒、同年建設省入省。住宅局、都市局、宝塚市役所、内閣官房都市再生本部事務局等を経て2010年国土交通省住宅局住宅総合整備課長、 2012年住宅局住宅生産課長、2014年内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長兼内閣府地方創生推進室次長、2016年国土交通省大臣官房審議官(住宅局担当)、2017年国土交通省住宅局長、2018年7月より現職。

詳細

日時

2019年3月16日

場所

東京大学構内理学部1号館2階「小柴ホール」